B:猛鳥の偕王 コクシグルー
村の周辺にも棲息しているレイルどもの、ボスとして君臨しているのが「コクシグルー」だ。非常に縄張り意識が強く、競合する野鳥を、絶滅に近い状況になるまで、追い散らした実績がある。そんな奴が、ゲートタウンの住人を襲ったという噂があるんだ。もしコクシグルーが「人」に目を付けでもしたら、次にこの島から駆逐されるのは、僕らの番かもしれない。そうなる前に、島の主権はどちらにあるのか、教えてやらなきゃな。
~ナッツ・クランの手配書より
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ショートショートエオルゼア冒険譚
「ドードーだわ」
巨大な岩石の上に登って遠くにいるレイルを見ていた。
コルシア島は100m近い断崖絶壁によって北部と南部が分かれている。高台になっている北部をトップラング、海岸線から続く低い平原地帯がボトムラングと呼ばれている。その南部側、ボトムラングはほぼ全域が草や樹木に大地が覆われている肥沃な大地だ。その一帯をテリトリーとする野鳥にレイルと言う青い鳥がいる。まん丸い体と長い嘴のこの鳥はドードーと同じように翼が体の割に小さく、飛ぶことがあまり得意ではない。主に地面を歩いては餌となる昆虫などを啄み、斜面になった土地に草を集めた巣を作って生きている。大きさは一般的な個体で体高が1.2m位だ。このレイルはつがいにはならず、少数のオスと多くの雌という構成の群れを作って暮らしているのだが、稀に幾つもの群れのボスが一匹の大ボスに従うというような大集団を形成することもある。因みに現在のコルシア島がその状態であり、その大ボスとも呼べる個体を地元の住民は「コクシグルー」と呼んでいる。
コクシグルーは通常のレイルの3倍近くある大きな体をしていて、自分の群れを守ったり、縄張りを守るという意識が飛びぬけて強い。特に、野生に生きる生物の最大の関心事といえば何より食料の確保だ。自分の統べる群れが食べ物に困らないだけの食料を常に確保する必要がある。そのため縄張り意識の強さは異常とも思えるほどで、その縄張りに侵入しようものなら特殊なスキルでもあるかのように目ざとく発見し、それが自分を食料として喰らってしまうような肉食獣であっても果敢に追い払おうと挑みかかる。以前コクシグルーの縄張りにほかの野鳥の群れが侵入したことがあったが、コクシグルーは一匹で野鳥の群れを執拗に追い回し、コルシア島固有の種だったその野鳥を一週間と待たずに絶滅させてしまったそうだ。岩石の上から眺めている範囲に話に聞いているコクシグルーサイズの個体は見当たらないかった。
今回のターゲットとなっているのはこのコクシグルーだ。コクシグルーの縄張りはその昆虫の多さによってアメーバのようにその形を変えることもあって、以前から街道を歩く人などがうっかりコクシグルーが縄張りと認識している範囲にうっかり足を踏み入れて襲われるケースはよくあったらしいが、先日はユールモアの玄関口であり貧民街であるゲートタウンに現れ、人に襲い掛かったのだという。貧民街の住人が大勢襲われ重傷軽傷問わず被害に遭ったという。人に被害が出たとなれば放ってはおけない、その辺りの感覚はエオルゼアもこの世界も認識に差はないらしい。
余談だが、一般個体でも野生のレイルは筋肉質で身がしまっていて絶品の食材になるらしい。群れの大ボスとして一般個体よりも鍛えられているコクシグルーであれば更に美味しい事間違いなしだ。
いや、別に食材にするために狩る訳ではないが‥‥。ただ、コクシグルーを探して平野を徘徊してまともな食事にはありついていないあたしはその旨味溢れる味を想像するとヨダレが止まらなくなってしまう。
「ねぇ、鶏肉食べるならどんな料理がいい?」
相方も同じことを考えていたみたいだ、とっても気の合うことを言ってきた。
「照り焼きかなぁ…。唐揚げも捨てがたい。焼鳥ならタレ。」
あたしは想像を膨らまして答えた。
「絶対塩!」
相方は割と真面目に言い返してくると、そのあと笑った。
「じゃ、タレと塩両方ね」
早いとこ見つけて、やっつけて、拠点としているライト村に帰って調理してもらって思いっきり食べる。
二人とも口の中はすっかり焼鳥にしながらさっきより気合を入れて探した。
「いた!」
相方が声を上げ、指さした。その方向には岩の陰からノソノソと出てくる巨大なドードー…、いやレイルの姿があった。大きさは恐らく5mは超えている。
二人は岩の上に立ち上がると、もう我慢できないといった面持ちで岩から飛び降り、走り出した。